第30回横溝正史ミステリ大賞に応募したものの、梗概を大幅に超過していたことに気づき、絶望する僕。
それでも震える指で、一次選考通過者の載ったページを開いた。
あった!!!!
マジか! やった!
と叫びつつも、「どういうこと?」という疑問が生じた。
梗概の枚数は関係なかったということか。いやいや、おそらく関係はあるはずだ。
きっと原稿を読んでくれた人が梗概超過には目をつぶってくれた……ということは、純粋に内容を評価してくれたのか。
「ありがとう……」
見も知らぬ担当者(当時は下読みという言葉も知らなかった)に感謝の念を捧げた。でも、しっかり規定は守らなければ。これが当たり前だと思ってはいけないのだ。
この時の応募総数は223。一次選考通過は21。約9.4%の門を通過したことになる。
初めて書いた長編小説で上位10%以内に入れたことは、素直に嬉しかった。
しかもこれに気をよくした僕は、「このまま受賞してしまうかもしれない。ちゃんと小説の書き方を学ばなければ」と思い立ち、ネット検索をして、それらしいサイトを読み込んだ。
すると、いろいろと知らないことが書いてある。
特に「視点のブレ」については驚きの発見で、もう一度応募原稿を読み直してみたら「視点ブレブレ」という有様。
そんな作品でも通過させてくれて「ありがとう……」ともう一度思ったものの、「二次通過はなさそう……」という予感もひしひしと感じた。
そして某掲示板で、小説新人賞の最終候補に残った人には編集部から連絡が来ると書いてあるのを見つけた。僕は電話またはメールを待ち続けた。
しかし電話は鳴らず、メールは着信しない。
やがて最終候補が掲載された野性時代が発売された。
そこに、僕の名はなかった。
「やっぱりな……」と思いつつも、手ごたえを感じたことも確かだった。もっとしっかり取り組めば本当に受賞できるかもと思い、本格的に応募活動を開始しようと心に決めた。
そしてこの体験が、長きにわたる「応募沼」の序章に過ぎなかったとは、この頃の僕は思ってもいなかった。