中学二年生から数えて11年後の1998年。
僕は25歳になっていた。何かしら創作らしいものをしたいと思いつつも、結局は何もしないで過ごしてきた。小説家志望者の中でも、最底辺に属していたわけである。
東京の大学を卒業した後、そのまま東京で職探しをし、ゲーム制作会社で働いていた。「ものづくり」という点では大きく外してはいないものの、自分で何かを創り出すということはしていなかった。
その2年くらい前、1996年からインターネットを使い始めていた僕は、かなりネットにハマっていた。97~98年にかけてはホームページを作ったりして、オフ会なんかにも参加していた。
そこでライターをしているという方と知り合った。すると彼は、自身が運営するホームページで「リレー小説」の企画を始め、この企画への参加者を募った。
面白そうだなーと思い、僕も参加してみることに。前の人が書いたストーリーの続きを考え、彼にメールで送った。
その後、彼と飲みにいった時に、彼が言うのである。
「面白かった」と。
蘇る記憶。先生の感想コメント。
そしてさらに言うのである。
「他の人と明らかに違う。小説家を目指してみたら?」と。
いやいや冗談でしょ。褒めるにもほどがある。
しかしもっと言うのである。
「ほとんど初めて書いたんでしょ? でも、書いててちょっと上手いなと、自分でも思ったんじゃない? キョウイを感じたよ」
キョウイ? 胸囲……姜維(©三国志)……いや、脅威か? 脅威って何? オレが脅威?? そんな馬鹿な。
でも、そこまで言うならやってみようかな……。
僕は自宅に帰り、さっそく何か話を作ってみようと、パソコンを立ち上げた。
当時はMac(Power Mac7500/100)を使っており、Wordなんかもなかったのでメモ帳みたいなソフトを使い、文字を打とうとした。
何も思い浮かばない。
それもそのはずで、小説といえば吉川英治や山岡荘八等の歴史小説ばかり読んでいて、現代小説はほとんど手つかずのまま。書こうと思っても、インプットがほぼないのだから、手も動かないし何も考えつかない。
現代小説は高校生の時に横溝正史『獄門島』を読んで感銘を受け、何冊か横溝作品に手を出したものの、そこからの広がりはなく、この時を迎えてしまった。
そもそもリレー小説は前の人がある程度のストーリーを作ってくれているから、0から生み出すのとはまるで違うことにも気づいた。
それでも小さい頃から漫画やアニメ、ゲームでインプットはしていたので、何か書けるだろうと高をくくっていた。
でも、何も書けない。
この時点で素直にさまざまな小説を読み始めれば良かったのだけれど(これは本当にそうすれば良かったと今でも強く思っていますので、小説家志望の方は小説等の本をたくさん読みましょう!)、何となく負けな気がして、無理やりにでも何かを書こうとした。
少し書いては消し、少し書いては停滞し、少し書いては放り出し……を繰り返した。
繰り返してみたものの、結局何も書けなかった。なぜか歴史小説を書こうという発想はなかった。資料調べや時代考証等に臆していたのかもしれない。
書けないのなら本をたくさん読むとか、小説について勉強し始めればよかったのに、「だまされたのでは?」と、彼に疑念すら持つ始末。
そして何も書けない(書かない)まま、さらに11年を過ごすことになる――。
(第3回「だまされていなかった!」につづく)
■新人賞応募者向け~今回のポイント
・本はたくさん読みましょう
・書きたいジャンルをメインにしつつ、さまざまな作品を読むと良いでしょう